ガンガゼ(雁甲蠃、岩隠子、学名:Diadema setosum)は、ガンガゼ目・ガンガゼ科に属するウニの一種です。長い棘に毒があり、刺さると激しい痛みを起こすことで知られています。本記事では、ガンガゼの特徴と生態について紹介します。
ガンガゼの特徴
まずはガンガゼの動画をご覧下さい。
いや~、なんだかキモい系の水中生物ですよね(;゚Д゚)
そんなガンガゼを詳しく解説していきます。
ガンガゼは、全体に黒紫色で、殻の直径は5-9cmほどです。上から見るとほぼ円形で、底が平らな半球形をしています。生時は肛門の部分が袋状に膨らみ、その開口部周辺が黄色いのでよく目立ちます。
また、殻の側面やや上に五個の白い点がはっきり見えます。これが青いものや、刺の合間に鮮やかな模様が見られる例もあります。
ガンガゼの最大の特徴は、長い棘です。棘は長いもので30cmに達するそうで、本体に比べて著しく長いです。上向きの棘が長いのに対して、下側は短いです。
若い個体では棘に白の横縞模様が見られる個体もあります。
棘は細くて鋭く、先端は容易に人の皮膚に突き刺さります。表面に逆刺があり、かつ折れやすいため、皮膚内部に折れて残ることが多く、ひどく痛みます。毒で筋肉が麻痺したり、呼吸困難になることもあり、ウニの仲間の中では 特に気をつけるべき種です。
ガンガゼの生態
ガンガゼは、インド太平洋海域に広く分布します。岩礁やサンゴ礁の、潮間帯下部から水深15mほどまでの潮下帯に生息し、ほとんどは潮下帯で大きな岩の下側の物陰におり、棘が穴の外にブラシのように突き出して見えます。
夜間には穴から這い出て細かい藻類やデトリタスを食べています。
ところが一部のガンガゼは礁湖の砂底などに群れをなして生息します。昼間から開けた海底に互いに寄り合って移動しているのが見られます。世界各地でも個々に岩陰にいるか、開けた海底で集団を作るか、どちらかの生態を示します。
これはバリ島でもどちらも見られ、ショート動画でご紹介している種は集団を作る方の種です。
ガンガゼの群れは、十数個体から大きいものでは100個体程度が集まっています。その位置は常に移動するだけでなく、群れの構成個体もどんどん変わり、それらが互いにくっついたり分かれたりしています。移動速度もウニの仲間の中では動きが早いです。
岩の隙間に入る種の方は、イシダイ・モンガラカワハギなどの天敵にひっくり返されるのを避けるためと考えられています。長い棘をくわえて持ち上げられ、ひっくり返されると、棘の短い下面が露出し、そうすると容易に食べられてしまうためです。
同様に集団になるのも、互いに寄り合い、棘を交差させてひっくり返されないような適応と考えられます。
ガンガゼの目
ガンガゼを上から見ると、中心にオレンジ色の突起物があり、これが目のように見えるのですが、これはガンガゼの肛門になります。
たまに肛門の中にムラサキゴカクガニが棲んでいます。
ガンガゼには目となる器官は備わっておりません。「トゲに覆われた体全体が目と同じような働きをしていて光の明暗は判別することができる」と考えられています。
その為、自分の体の上に何らかの陰がかかると棘を振り動かす防衛反応を行います。集団の場合には一個体がこの運動を行うと隣が同調して運動を始め、結局は集団全体が針を振り動かすことになります。
長い毒棘の周辺には多くの魚やエビが共生しているのが見られます。
魚ではヘコアユやイシモチ類、バリ島ではシークレットベイでバンガイカーディナルフィッシュ
他にもハシナガウバウオ
エビではテナガエビ科のガンガゼカクレエビなどが挙げられます。
ガンガゼとウニの違い
ガンガゼとウニはどちらも棘皮動物で、特に形状や生態にいくつかの違いがあります。
ガンガゼ
- ガンガゼ目・ガンガゼ科に分類されるウニの一種です。
- 体表には非常に長いトゲが生えており、これらのトゲはとても硬く、触ると簡単に皮膚を貫通する危険性があります。
- トゲは30cm以上になるものもあり、毒を持っているため、接触しないように注意が必要です。
- ガンガゼはウニの一種ですが、毒を持っているため、一般的には食用としてはあまり使われません。
ウニ
- ウニ綱に分類される棘皮動物を指します。
- ウニの骨格は炭酸カルシウムで形成され、その中身は食用として色々な料理や加工に使われています。
- ウニの中身はとてもまろやかな食感とうま味があり、刺身や海鮮丼、寿司など色々な日本料理に使われています。
- ウニに生えているトゲは手のひらに乗せても深く刺さる硬さではないのが特徴です。
ガンガゼの利用と問題
ガンガゼは、一般的には食用にされませんが、卵巣・精巣は他のウニと同様に食べる事ができます。
日本では 食用以外に、イシダイが好んで捕食されることを利用して、釣り餌として使われます。トゲの取り扱いに注意を要しますが、イシダイ以外の魚に捕食されにくいため、数ある釣り餌の中でもイシダイ専用として多用されます。
一方で、ガンガゼは海藻を餌としているため、増殖すると海藻を食べ尽くして磯焼けを起こすという問題があります。
実際、宮崎県日南市の外浦漁港では食用にしないため漁の対象にならず増殖し、海藻を食べ尽くし磯焼けが起きる問題が発生し、地元のダイバーがボランティアで駆除する活動を行っています。
一部では駆除されたガンガゼを利用して工芸品を作ることも行われています。
ガンガゼに刺されたときの対処法
ガンガゼに刺されたときは、まずは刺さった棘を抜き取ります。棘は折れやすいので、ピンセットなどで根元から引き抜くのが良いでしょう。棘が皮膚の深い部分に残っている場合は、医療機関で処置を受ける必要があります。
次に 刺された部位を温めます。ガンガゼの毒は熱に弱いので、熱湯やホットパックなどで40-50℃程度に温めると、毒の効果が弱まります。ただし、火傷に注意してください。
温める時間は、痛みが和らぐまで、約30分ほどが目安です。その後、消毒液や抗生物質の塗り薬などで感染を防ぎます。刺された部位が赤く腫れたり、熱が出たりする場合は、医療機関で診てもらうことをおすすめします。
まとめ
如何でしたでしょうか?
海に行くと浅瀬でも見られるガンガゼ、日中は岩の隙間に入り込んだり、集団を作ってイシダイなどから身を守っているんですね。
こういう生態を知ると、海の中で出逢った時に面白さが倍増しますね♪
食用にもなるという事で、少し見る目も変わってきますが(^^ゞ、あの長い棘は刺さると毒もあり、厄介な代物です。
ダイビングやシュノーケリングはもちろん、磯遊びなどでも見られますが、誤って触ったり踏んだりして 棘が刺さらないように気をつけて下さい。マリンブーツを履いていても靴底を貫通する事もあります。
もし棘が刺さってしまったら、棘を抜き、患部をヤケドしない程度の熱湯で温めてから消毒などの処置を施しましょう。棘が深く刺さっていたり、患部が赤く腫れる・熱が出るなどの症状がある場合は、早く医療機関に行く事をお勧めします。
ガンガゼなどの危険な生物に気をつけながら、安全に楽しく海で遊びましょう!
バリ島くらげ村が “スローダイブ” でご案内させて頂きます!